五月六日までという期限で、全国を対象に出されていた新型コロナウイルス禍にかかる緊急事態宣言は、さらなる蔓延の恐れが払拭されず、五月三十一日まで延長されました。 そんな中、医療に従事している方々は、感染の危険に晒されながら、ご家族の心配や、謂われのない偏見を背に、献身的に業務を遂行されています。 紀三井寺では、こうした医療関係者に、感謝と応援の意を伝える為、世界的に展開されている「ブルーライトアップ」運動に呼応して、五月七日(木)から二十一日(木)までの二週間、夜七時から十時までの三時間、境内の仏殿をブルーにライトアップしています。 (照明施工はアークコーポレーション・橘登氏) これはまた、この災禍を封じ込めるため、移動や営業の自粛に協力して犠牲を払っておられる全ての人たちへのエールでもあります。
このウイルスの好物は、人同士が近づくことです。人と人が離れてしまうと、このウイルスは生きることすら出来ません。ですから、不要不急の用件で人同士が近づくことは、「戦時下」の今は我慢せねばなりません。 ご祈祷、ご回向、御法話に巡礼、紀三井寺で行っている全ての行事が実は「不要不急」だったのだと、今回初めて、思い知りました。 でも逆に、スポーツ、演劇、様々な会合、そして宗教、「不要不急」のこれら全てが、いかに私たちの生活に色を添え、心に潤いを与えていたかを気づかされることにもなりました。 不要不急なる娯楽余興を全て失った今、ウイルスへの恐怖は、疑い、妬み、怒り、偏見、差別といった様々な病変を増殖し、人は、人との心の距離まで離してしまうのです。 今こそ、身体は離れても、心はぎゅっと寄せ合って、笑い合い、励まし合い、苦境を乗り越えていこうではありませんか。
紀三井寺 貫主 前田泰道