去る十二月七日(木)午後一時半より、本堂前にある手水舎改修工事の竣工を祝い、併せて天井画にお魂を込める開眼落慶法会が営まれました。
この手水舎は、以前同所に有ったものが台風被害で破損したのを受けて、今から五十九年前、昭和三十九年五月に建て直されたものです。水鉢は、以前のものが老朽顕著となり、今から三十二年前、すぐ東側に海軍戦没者慰霊の修行大師像を建立された航空母艦瑞鶴の生存兵、大阪の故・竹田喜代一氏により同じ年、戦争犠牲者供養にと、蓮華型の水鉢が新調されました。
この水鉢も、最近水垢や錆による汚損が顕著となり、さらに、コロナ禍を境に、柄杓を共同使用することへの抵抗感、SDGsの観点から、水を常時垂れ流すことへの「もったいない」感が増したのを受けて、センサーによって出水・止水を自動化することとしました。水鉢は研磨の後コーティングも行い、歩きにくい自然石の土間は剥がして、透水性の土間材で敷き替えました。施工者は前畑建材店さんです。
さらに、紀三井寺で「水」といえば三つの井戸。この手水舎で、三つの井戸の功徳をお伝えする仕掛けは出来ないだろうかと考え、黒御影石の三井桁から三つの蛇口が出る仕組みを検討しましたが、クネクネ曲がる銀色蛇腹式の蛇口は、なんだかタコ型宇宙人の触手の様で体裁は悪く、昨年ケーブル遊歩道・お砂踏み霊場のローソクオブジェを制作して下さったFRP(繊維強化プラスチック)の作家・石田貴志氏に、蓮のオブジェ制作をお願いしました。蓮の葉が受ける風の対策は、複数の「葉」を接合することを提案して頂きました。 (第二面に続く)
(第一面から続く)結果、三本の蕾の蓮を擁し、蓮の葉先から直接御参詣者の手に水をお届け出来る蛇口が完成しました。出てくる水は水道水なので安心して飲用もして頂けますし、七日の法会で、三蛇口に三霊水の功徳(第三面御参照)が祈り込められました。
こうして改修が進む中、ローソクオブジェ制作や天空かふぇに天女壁画を奉納下さった田村茂、渡里幸の両画伯から天井画御奉納のお申し出を頂きました。青龍が三井水の宝玉を把持・守護する画は、前田泰道貫主により『青龍守霊泉』と命名されました。
お二人の御希望で、今年八月九日、千日詣御参詣の老若男女三三三人に、画の裏面にお名前と願い事を記入して頂きました。「願いの天井画」です。 その後も奉納者は続きます。田村さんのお知り合いで、橋本市の県名匠建具師・池田秀峯氏が天井画の額縁を、和歌山県立紀北工業高校の生徒さんに指導して作って下さることとなり、三井水の井桁をアクリル三色で表現した額縁が今月初め、届きました。
同じく田村氏の知人・西口正規氏からは、黒御影の井桁を飾る三体の可愛い陶製地蔵尊が奉納されました。
七日の法会には、奇しくもこの共同制作に携わることとなった関係者が御来山、一同に会して下さいました。
前田貫主の作法で天井画の青龍が開眼され、三つの水口に三井水の功徳が祈り込まれると、その作法を感知したセンサーによって蓮の葉の水口からほとばしり出る「功徳水」が、小春日和の境内に新たな水音を響かせました。
皆様どうぞこれからは、観音様にお会いになる前には、三井水の功徳も頂ける手水舎にご結縁下さいませ。