紀三井寺の桜 Cherry Blossoms of Kimiidera
紀三井寺の境内には約500本の桜の木が植えられています。特に京阪神では、当寺は早咲き桜の名所として有名で、開花宣言の目安となる和歌山地方気象台指定の標本木(ソメイヨシノ)が本堂前にあることから、「近畿地方に春を呼ぶ寺」として、3月も半ばとなるとマスコミ等の注目を集めます。
この紀三井寺の桜にも為光上人にまつわるいわれが有ります。
上人は、あるとき、龍神の招きを請け、竜宮城に説法に行かれてその帰り、七つの宝物をもらいました。
鈴と、五鈷と、錫杖と、梵鐘と、法螺貝と、応同樹と、七本桜の七つです。
この最後の七本桜の苗木が、後の桜の名所の起こりとなりました。
有名な江戸時代の俳人・松尾芭蕉は、せっかく花見を期待してきたのに、既に散始めていた桜を仰いで
みあぐれば 桜しもうて 紀三井寺
と詠みました。(清浄水辺の句碑郡の中にこの芭蕉の句碑もあります)
※紀三井寺は、平成2年3月財団法人日本さくらの会より「日本さくら名所百選」に選ばれました。
紀三井寺の樟樹 Camphor tree
紀三井寺護国院の本堂前に、樹高20m、胸高幹周り5.8mで、推定樹齢400年とされる大樟樹があります。樟樹は、植物分類ではクスノキ科ニッケイ属で、防虫効果のある芳香を持ち、特に西日本で人里近くに多く植生する樹木です。2.5mの高さから3本の幹にわかれ、それより四方八方に枝が広がり、広場の南半分をおおっています。遠く和歌の浦からもその偉容が望見できるほどです。枝分かれの又状の部分には、木本植物のネズミモチ・ナワシロブミと、草木植物のリュウキュウヤブラン・ヘクソカズラが着生しています。樟樹北側の根元には小祠が建てられ、樟龍王大神として祀られています。
応同樹(おうどうじゅ) Ohdojyu
護国院(紀三井寺)は、宝亀元年(770)、為光上人によって開かれた寺院です。寺伝によると、応同樹は為光上人が竜宮で竜王から贈られて持ち帰った霊木とされています。植物分類では、クスノキ科タブノキ属の常緑高木で、照葉樹林の代表的な樹種のひとつです。表坂中腹滝ノ坊の上にある応同樹は、和歌の浦を見渡す場所にあり、樹齢は約150年とされています。昭和44年(1969)、天然記念物として指定を受けたときには、幹周り2m、樹高15mの立派な樹観でした。現在では虫損により高さ1.5mで伐採されていますが、主幹や根元からは新しい枝が育っています。